遠隔画像診断のメリットや注意点とは?
遠隔画像診断は、放射線科専門医が不足している医療機関が積極的に検討したい手法です。導入を検討する際は、メリットについて理解したうえで、注意点やコストなども確認し、総合的に見て判断しましょう。
本記事では、遠隔画像診断のメリットや注意点等について詳しく解説します。
遠隔画像診断とは
遠隔画像診断は、ITとインターネット技術の進歩によって実現した医療の新たな形態です。
まず、通常の画像診断と同様に、CTやMRIなどの検査機器で患者の画像を撮影します。 次に、撮影した画像を提携している医療機関や遠隔画像診断支援サービスを提供している事業者に送信し、そこに在籍・提携している放射線科専門医が読影し、読影レポートを作成・返却する仕組みです。
例えば、患者が近隣の病院でCT検査を受けたとします。その画像がインターネットを介して遠隔地の放射線科専門医に送信され、画像を読影。疑わしい所見や病変を特定、読影結果について、依頼元の病院へ報告します。
このように通信技術が進歩したことで、地理的な距離や制約を超えて、遠隔地にいる放射線科専門医が患者の画像を読影し、治療に関する意思決定をサポートできるようになりました。
遠隔画像診断のメリット
遠隔画像診断のメリットは以下のとおりです。
- 放射線科専門医の意見を聞くことができる
- 多様な働き方に対応できる
- 医師不足を解消できる
- CT・MRなどの検査機器の稼働率を向上させることができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
放射線科専門医の意見を聞くことができる
遠隔画像診断のメリットの1つは、遠隔地の放射線科専門医の意見を聞くことができる点です。
たとえば、地方の病院では放射線科専門医が不在なことが少なくありません。遠隔画像診断を利用することで、遠隔地にいる専門医の意見を直接聞くことができます。
多様な働き方に対応できる
これは遠隔画像診断を行う放射線科専門医にとってのメリットですが、自宅などに読影環境を整えることで、勤務している病院以外の場所でも仕事が出来るようになるため、多様な働き方に対応できます。
医師不足を解消できる
遠隔画像診断は、医師、特に放射線科専門医の不足を解消するための有力な手段として利用されています。
地方の病院や小規模なクリニックでは画像診断を行う医師の確保が難しい場合がありますが、遠隔画像診断を活用することで、医師が不足している医療機関でも高品質な画像診断が可能となります。
CTやMRIなどの検査機器の稼働率が向上する
遠隔画像診断の導入により、検査機器の稼働率が向上します。
たとえば、検査機器を保有していても単科のクリニックで患者が限られており、稼働に余裕のある場合、近隣にある医療機関の患者の検査を受け入れていることがあります。
そのような場合、遠隔画像診断を導入することで、専門外の検査画像にも読影レポートを付けて返却できるようになる為、近隣医療機関からの検査依頼が増え、検査機器の稼働率向上が期待できます。
遠隔画像診断システム導入について
遠隔画像診断を導入するためには、システムを導入しなければなりません。
遠隔画像診断システムは一般的に依頼端末とインターネット回線という構成になっています。院内のPACSやCT・MRIなどの検査機器と依頼端末を接続することで依頼端末からインターネット回線を通じて放射線科専門医のところへ画像が届けられます。
また、院内の運用方法にもよりますがRIS(放射線情報システム)やレポートシステムと連携を行うことで、読影依頼からレポート返却までシームレスに行うことが可能になります。
遠隔画像診断が向いている医療機関
遠隔画像診断の導入を検討する際は、メリットがあるかどうかを慎重に確認する必要があります。遠隔画像診断の導入が向いているのは、次のような医療機関です。
- 放射線科専門医がいない、もしくは不足している
- 検査機器の稼働率が低い
- 医師の働き方改革に力を入れている
それぞれ詳しく見ていきましょう。
放射線科専門医がいない、もしくは不足している
遠隔画像診断は、放射線科専門医が不足している医療機関にとって、特に有益です。
たとえば、地方の病院や小規模なクリニックでは、放射線科専門医が不在な場合があります。遠隔画像診断を導入することで、放射線科専門医が不足している医療機関の患者も高品質な画像診断を受けることができ、医療の質の向上につながります。
検査機器の稼働率が低い
検査機器の稼働率が低い医療機関も遠隔画像診断の導入に適しています。
検査機器を保有していても稼働に余裕のある医療機関では、検査機器を保有していない近隣医療機関と検査機器の共同利用を行っていることがあります。遠隔画像診断を導入することで、近隣医療機関から受け入れた患者の検査に読影レポートを付けて返却できるようになります。
読影レポートが付くことは検査依頼する側にとってもメリットである為、近隣医療機関からの患者の受け入れ増加が期待でき、検査機器の稼働率向上につながります。
医師の働き方改革に力を入れている
医師の働き方改革に力を入れている医療機関にとっても、遠隔画像診断を導入するメリットは大きいと言えるでしょう。
遠隔画像診断を導入することで、読影を行う医師にかかる負担を分散することができます。信頼できる遠隔画像診断を導入すれば、読影を行う医師の労働時間を削減し、ワークライフバランスの改善につながるでしょう。
遠隔画像診断の注意点
遠隔画像診断には、次のような注意点があります。
- 通信環境やシステムの構築に時間とコストを要する
- 個人情報の適正な取り扱いが必要
- 遠隔画像診断が可能な医療機関・事業者を探す必要がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
通信環境やシステムの構築に時間とコストを要する
遠隔画像診断を導入するには、適切な通信環境やシステムの構築が必要です。
遠隔画像診断データの送信・報告には暗号化通信を使用し、情報漏洩のリスクを軽減する必要があります。また、画像診断用端末内にはデータを残さず、情報漏洩のリスクを軽減する機能を実装することも重要です。 このような仕組み作りには、時間とコストがかかるという側面もあります。
個人情報の適正な取り扱いが必要
遠隔画像診断では患者の個人情報がオンラインでやり取りされるため、個人情報の適正かつ慎重な取り扱いが必要です。医療機関は、適切なセキュリティ対策やプライバシーポリシーの策定など、個人情報保護に十分に配慮する必要があります。
遠隔画像診断が可能な医療機関・事業者を探す必要がある
遠隔画像診断を導入するには、遠隔画像診断を委託できる医療機関・遠隔画像診断支援サービスを提供している事業者を探す必要があります。
遠隔画像診断を導入する医療機関は、以下のような条件を満たすことが重要とされています。
項目 |
内容 |
システム基盤と管理サービス |
遠隔画像診断データの送信・報告には暗号化通信を使用する 画像診断用端末内にはデータを残さず、情報漏洩のリスクを軽減する機能を実装する |
ネットワーク管理 |
ネットワーク接続はセキュリティに留意したIP-VPNやIPSec+IKEによるものとし、安全性を確保する 医療情報の外部交換時にはなりすましや盗聴などの脅威から保護し、情報の送受信を確実に行う |
ハードウェア管理 |
画像診断用端末には適切なモニタを使用し、DICOM Part14に準拠したキャリブレーションを行う 液晶モニタを適切に管理・整備し、推奨される性能に準拠する |
画像情報の管理体制 |
情報システムに精通した者が構築・管理し、暗号化や改ざん検出などの対策を講じる 運用管理規程を定め、情報の持ち出しや端末の利用に関する制約を明確にし、リスクを最小限に抑える |
医師の資格と教育 |
放射線診断専門医または同等の能力を持つ医師が遠隔画像診断に従事し、必要な教育を受ける |
情報の安全性確保 |
医療情報の保護に関する法規やガイドラインに準拠し、情報の安全性を確保する 定期的な点検と改善を行い、情報の安全性を継続的に向上させる |
ガイドラインの利用指針 |
技術的進歩に対応し、遠隔画像診断システムの改善と質の向上に努める<法規に違反しない範囲で新技術の導入を検討し、情報の安全性を確保する |
参考:日本医学放射線学会「遠隔画像診断に関するガイドライン2018」
上記のように様々な条件を満たし、安全性と品質を確保して最良の医療サービスを提供することが求められます。読影料金だけではなく、利用する読影システムの使い勝手や、読影レポートの質なども考慮した上で、適切な委託先を選定する必要があります。
まとめ
遠隔画像診断のメリットは大きいため、前向きに導入を検討することをおすすめします。しかし、遠隔画像診断を行える医療機関を探すには時間と労力がかかります。
そこで検討したいのが遠隔画像診断支援サービスを提供している事業者の起用です。医療機関同士の遠隔画像診断と同様に、放射線科専門医が診断するため、医療の質を下げることなく医療機関が提供する遠隔画像診断と同等のメリットを得ることができます。
遠隔画像診断の導入をご検討されている場合は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。