画像診断とは?主な種類と遠隔画像診断について分かりやすく解説

医療の進歩により、体内の状態を可視化して診断や治療に役立てる「画像診断」は、現代医療に欠かせない診断手法となっています。X線やCT、MRI、PET、超音波(エコー)などの画像検査で得られたデータを読影し、病気の有無や進行度を評価することで、正確な診断や治療方針の決定に大きく貢献します。
さらに近年では、専門医が不足する地域でも高精度な診断を実現できる「遠隔画像診断」にも注目が集まっています。本記事では、画像診断の役割と主な種類、新しい形態である遠隔画像診断について分かりやすく解説します。
画像診断とは
画像診断は、X線やCT、MRI、PET、超音波(エコー)などの医用画像検査を通じて体内の状態を可視化し、病気の有無や広がり、進行度を評価する方法です。得られた画像は、病気の早期発見や正確な診断に役立つだけでなく、治療方針の決定や治療後の経過観察にも幅広く利用されます。
近年は画像処理技術や解析技術の進歩により、より精度の高い診断が可能になっており、現代医療を支える欠かせない手法となっています。
画像診断の主な種類
画像診断にはいくつかの方法があり、それぞれ得意とする分野や特徴が異なります。代表的な検査には、骨や臓器の状態を確認できるX線検査、断層画像で体内を詳細に観察できるCT、被曝のないMRI、痛みを伴わず繰り返し行える超音波検査、がんの診断に有効なPET検査などがあります。
ここでは、それぞれの検査について具体的に見ていきましょう。
X線検査(レントゲン)
X線検査は、肺や骨、腹部など幅広い部位の異常を調べるためにもっとも一般的に行われる画像検査の一つです。体を構成する骨・水分・脂肪・空気などによってX線の通りやすさが異なるため、その差を利用して体内の状態を画像化します。骨は白く、水分は灰色、空気は黒く映し出されます。読影医は影の濃淡や形の変化を分析して、骨折、炎症、腫瘍、臓器の損傷や異常なガス貯留などを判断します。特に骨の評価に優れており、消化管や尿路を調べる際には造影剤を使用して診断精度を高めます。
検査時には、衣服に付いた金属やボタンが画像に写り込むのを避けるため、必要に応じて検査着に着替えます。撮影する部位によっては体の姿勢を変えたり、一時的に息を止めたりすることがあり、検査自体は5分程度で終了します。胃の検査ではバリウムを飲み込み、尿路系の検査では造影剤を注入するなど、部位ごとに適切な方法が取られます。
X線検査は短時間で行える上、その場で画像を確認できる点から、日常診療で幅広く利用されています。ただし、一方向からの撮影であるため、臓器が重なっている部位では詳細な診断が難しい場合もあります。また、放射線を使用するため被曝は避けられませんが、一般的な検査では健康に影響を及ぼすほどではありません。
CT検査(コンピュータ断層撮影)
CT検査は「Computed Tomography」の略称で、X線を利用して体の断面を画像化する検査です。従来の単純X線では一枚の画像に複数の構造が重なって写り込みますが、CTでは体の内部を断層ごとに映し出すため、より詳しく状態を把握できます。近年の装置は0.5mmという非常に薄い断面まで撮影でき、短時間で全身を確認できるのが特徴です。
必要に応じて造影剤を使用し、血流や臓器の状態をより鮮明に描き出すことも可能です。造影剤にはヨードが含まれており、ごくまれに副作用が生じることがありますが、安全に検査を行えるよう医療現場では十分な注意が払われています。
MRI検査(磁気共鳴画像)
MRI検査は「Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像診断)」の略称で、強力な磁場を利用して体内の断面画像を描き出す検査です。大きな特徴は、X線を使用しないため被曝の心配がないことです。また、さまざまな撮影方法の種類があり、水分を強調して炎症を確認したり、脂肪を抑えて腫瘍を見やすくしたり、微細な出血を検出したりと、目的に応じた撮影が可能です。
検査の際はトンネル状の装置に入り、検査中は「ガガガー」という大きな音が続くため、耳栓やヘッドホンを装着して快適性を保ちます。ただし、強い磁場を利用するため、ペースメーカーや金属製の医療機器を体内に埋め込んでいる方は検査を受けられない場合があります。
超音波検査(エコー)
超音波検査は、体に専用のプローブを当て、そこから発した超音波が体内の組織で反射する仕組みを利用して映像化する検査です。検査の際には、音波を伝えやすくするために肌にジェルを塗り、体内の状態を鮮明に映し出します。
プローブには用途に応じた種類があり、腹部の深い部分を調べるもの、乳腺や甲状腺などの浅い部位を調べるもの、心臓や血管の動きを捉えるものなどが使い分けられます。放射線を使用しないため被ばくの心配がなく、痛みも伴わないことから幅広い診療科で利用されている検査方法です。
PET検査(陽電子放出断層撮影)
PET検査は、がんの有無や広がり、ほかの臓器への転移の有無を調べたり、治療効果を判定したり、治療後の再発を確認したりと、さまざまな場面で活用される精密検査です。
この検査では、放射性フッ素を付加したブドウ糖であるFDGを静脈から注射し、体内の細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を画像化します。がん細胞は正常細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む特徴があるため、FDGが集まった部位を確認することで、がんの存在を推測できます。
さらに、PET検査はCTやMRIと組み合わせて行われることもあり、特にPET-CT検査では両方の画像を重ね合わせることで、がんの位置や広がりをより正確に診断することが可能です。
その他の画像検査
その他にもさまざまな画像検査があります。直接体内の画像を見ることができる内視鏡検査、眼の状態を検査する眼底検査、胃の中を確認できる胃透視検査、乳がんの有無などを調べるマンモグラフィ検査などがあり、さまざまな装置を使用し病気の状態や早期発見などに役立っています。
遠隔画像診断とは

遠隔画像診断とは、CTやMRIなどで撮影した医用画像をインターネット経由で専門医に送信し、離れた場所にいる放射線科専門医が読影や診断を行う仕組みです。
放射線科専門医の不足や地域医療の格差を解消する手段として注目されており、特に地方や小規模の医療機関にとって有効なサポートとなります。診療の質を高めるだけでなく、医療機関の負担軽減や検査機器の有効活用にもつながることから、今後さらに普及が進むと期待されています。
メリット
遠隔画像診断のメリットは、地理的な制約を超えて放射線科専門医の診断を受けられる点です。地方の医療機関や小規模クリニックでは専門医が在籍していないケースも多く、これまでは高度な画像診断を提供することが難しい状況がありました。しかし遠隔画像診断を導入すれば、都市部の医療機関や大学病院などに所属する専門医の読影を迅速に受けられるようになり、診療の質を大幅に向上させることができます。
また、専門医にとっては自宅や研究室など医療機関外からでも読影が可能になるため、働き方の柔軟性が広がり、ワークライフバランスの向上にもつながります。特に医師不足が深刻化している現在、多様な勤務形態を認めることで優秀な人材を確保・維持できる点は大きな意義があります。
さらに、CTやMRIなどの高額な検査機器によって映し出された医用画像は、専門医による読影が前提となるため、遠隔画像診断を組み合わせることで機器を最大限に活用でき、稼働率の向上が期待されます。検査依頼の受け入れが増えることで地域医療全体の診断体制を底上げでき、患者にとっても迅速かつ高品質な医療サービスを享受できるようになります。
注意点
遠隔画像診断を導入する際には、いくつかの注意点があります。まず、画像データは大容量かつ高解像度であるため、安定した通信環境が必須です。加えて、暗号化通信やアクセス制御といったセキュリティ対策を整えなければ、情報漏えいのリスクが高まります。導入コストやシステム構築に時間がかかる点も課題です。
また、遠隔でやり取りするデータには患者の個人情報が含まれるため、個人情報保護法や医療情報関連のガイドラインを遵守した運用体制が求められます。情報の保管・利用方法、権限管理などを徹底しなければ、法的リスクや信頼性の低下につながるおそれがあります。
さらに、診断を委託する事業者や医療機関の実績・体制を慎重に確認することが重要です。契約先の読影精度やレポートの質、緊急対応の有無などを確認せずに導入すると、診断の正確性や安全性に不安が残り、結果的に医療の質を損なう可能性があります。
遠隔画像診断のリスクや導入時の注意点について、より詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

関連記事:遠隔画像診断のメリットや注意点とは?
まとめ
画像診断は、病気の早期発見や治療方針の決定に欠かせない医療の基盤です。X線やCT、MRI、超音波、PETといった検査は、それぞれに特徴があり、適切に使い分けることで精度の高い診断につながります。加えて、遠隔画像診断の普及により、地域や医療機関間の格差を補い、より多くの患者が専門的な医療を受けられる体制が整いつつあります。
一方で、システム導入や情報管理には慎重さが必要です。画像診断の多様な手法と遠隔化の可能性を理解し、安全で質の高い医療の提供につなげていきましょう。
iMedicalの遠隔画像診断支援サービスでは、100名以上の放射線科診断専門医とのネットワークを生かし、高品質な読影レポートを提供しています。PACSやレポートシステムとの連携による効率化、緊急読影への迅速な対応など、各医療機関のニーズに合わせた柔軟なサポート体制を整えています。
読影医不足や検査機器の有効活用、診断の品質向上でお悩みの方は、ぜひ一度iMedicalまでご相談ください。
