読影とは?医療現場に欠かせない画像診断の役割と遠隔読影の活用

厚生労働省の調査によれば、CTやMRIといった高機能画像診断装置の導入台数は着実に増加しています。これに伴い、X線、CT、MRI、超音波などの画像をもとに疾患を評価・診断する「読影」の重要性も高まっています。
一方で、放射線科医の人材不足や、地方と都市部との読影体制の格差、診療現場での業務負担の増大といった構造的な課題も指摘されており、現場では安定した読影体制の確保が難しい状況も見られます。
本記事では、読影の基本的な役割と医療現場での活用例、課題とその解決策として期待される遠隔読影について詳しく解説します。
読影とは
読影(どくえい)とは、X線やCT、MRI、内視鏡、心電図などの医用画像を専門の医師が解析し、病気やケガの診断に役立てる医療行為を指します。医療機関には高度な検査機器が導入されていますが、そこで得られた画像を患者自身や非専門の医療従事者が見ただけで、異常を正確に判断するのは困難です。
そのため、専門的な知識と経験をもとに画像を読み解く「読影」が、正確な診断を支える重要な工程となっています。
読影を行う医師は「読影医」と呼ばれ、内科医や外科医などがある程度対応することもありますが、放射線科の専門医が担うケースが一般的です。また近年では、医療機関に常勤せず、遠隔画像診断支援サービスを通じて読影を行う医師も増えており、読影医の働き方にも多様性が見られるようになっています。
読影が活用される主な検査
読影は、特定の検査に限られたものではなく、さまざまな診療科・検査領域で活用されています。
読影が活用される主な検査とその特徴について、代表例を挙げて解説します。
CT検査
CT検査は、体の周囲からX線を照射し、断層画像を得ることで、臓器や血管、骨などの内部構造を立体的に描出する高度な検査方法です。複数枚の画像を組み合わせて再構成された3次元画像を読影することで、がんや脳出血、内臓損傷などの診断において高い精度を発揮します。
MRI検査
MRI検査は、磁力と電波を用いて体内の詳細な画像を得る非放射線型の検査で、特に脳や脊髄、関節、軟部組織の診断に優れています。撮影方向の自由度が高いため、複雑な構造を持つ部位においてもより正確な読影が可能になります。
X線検査
X線検査は、X線を体に照射し、透過した量の差によって骨や臓器などの内部構造を画像化する検査です。主に胸部や腹部、骨の状態を調べるために使われ、肺炎、骨折、腸閉塞などの診断に広く活用されています。撮影は短時間で行える一方で、肺の小さな結節や骨の微細なひびなど、見落とされやすい所見も含まれるため、専門医による的確な読影が診断の精度を左右します。
RF検査
RF検査は、人間ドックなどで行われる胃のバリウム検査です。動的な画像を通して、臓器の動きやバリウムの流れを確認することで、消化器疾患の早期発見に役立ちます。
心電図検査
心電図検査は、心臓の電気的活動をグラフとして記録することで、心筋梗塞や不整脈といった疾患を評価する検査です。画像ではありませんが、波形の読み取りを通じて医師が診断を行うという点で読影に含まれます。特に微細な波形の乱れを正確に判断することが求められます。
眼底検査
眼底検査は、目の奥にある網膜や血管、視神経の状態を調べる検査です。専用のカメラを用いて撮影した画像をもとに読影を行います。緑内障や眼底出血、糖尿病網膜症など、視力に関わる深刻な病気の発見に寄与し、早期診断には画像の細部を見極める技術が求められます。
内視鏡検査
内視鏡検査は、先端に小型カメラが付いた細い管を体内に挿入し、消化管などの内部を直接観察する検査方法です。胃や大腸の粘膜を詳細に映し出すことができ、ポリープや潰瘍、出血の有無などを視認できます。撮影された画像や録画映像を読影することで、病変の有無や進行度を診断できます。
超音波検査
超音波検査は、体表から超音波を当て、臓器や組織から反射して戻ってきた波を画像として表示する非侵襲的な検査法です。一般的に「エコー検査」とも呼ばれ、肝臓や腎臓、心臓、甲状腺、血管などの状態をリアルタイムで確認できます。
放射線を使わない安全性の高さから幅広い診療科で活用されており、得られた画像を読影することで、腫瘍や炎症、血流異常などの発見につながります。
読影における主な課題
画像診断の精度を支える読影は、現代医療において極めて重要な役割を担っていますが、その運用には課題も伴います。ここでは、読影業務における代表的な課題について解説します。
放射線科医の不足と地域格差
読影の精度を担保する上で、専門的な知識と経験を持つ放射線科医の存在は欠かせません。しかし、日本全体で放射線科医の数は不足しており、特に地方の医療機関では常勤の読影医を確保できないケースが多く見られます。その結果、都市部と地方の間で診断体制の格差が広がり、地域によって提供される医療の質に差が生じる要因となっています。
診療現場の負担と時間的制約
医療現場では日々多くの検査が実施されており、それに伴って発生する読影業務の量も増加傾向にあります。特に外来や救急、入院患者への対応と並行して、画像を確認・診断する必要があるため、読影医の負担は非常に大きくなっています。読影は一枚一枚の画像を丁寧に観察し、微細な異常を見逃さない集中力と専門知識が求められる作業であり、単なる作業時間の問題ではなく、精神的・認知的な負荷も大きいのが特徴です。
放射線科医の人員が限られている医療機関では、一人の読影医が一日で何十件もの画像を読影しなければならないこともあり、常に時間との戦いを強いられています。その結果、読影の質に影響が出るリスクや、見落としにつながる可能性も否定できません。こうした状況は、医療従事者の過重労働や燃え尽き症候群にもつながり、ひいては医療安全そのものを脅かす深刻な課題といえます。
見落とし・誤診のリスクと医療安全
どれほど経験豊富な医師であっても、ヒューマンエラーを完全に防ぐことはできません。画像に微細な異常が写っていても、疲労や業務の過密によって見落としや誤診が生じるリスクは常に存在します。こうした読影ミスは診断の遅れや治療の方針の誤りにつながる可能性があり、患者の安全性を確保する上で大きな課題とされています。
遠隔読影によって課題を解決できる可能性がある
読影精度の向上や見落とし防止のために、画像を複数の読影医で確認する「ダブルチェック(二重確認)」の体制が理想とされています。しかし、すべての医療機関に放射線科専門医が常駐しているわけではなく、医師不足が深刻化する中では現実的に困難なケースも少なくありません。こうした課題を補完する手段として注目されているのが、遠隔読影です。
遠隔読影の仕組みとメリットについて詳しく見ていきましょう。
遠隔読影の仕組み
遠隔読影は、医療機関で撮影されたCTやMRIなどの画像を安全な通信ネットワークを通じて外部の読影医に送信し、画像診断を委託する仕組みです。
画像は、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)や検査機器(モダリティ)から遠隔画像診断用サーバに送られ、読影医の端末へ転送されます。読影医は専用モニターで画像を確認し、診断レポートを作成して医療機関へ返送します。
この通信にはVPN(Virtual Private Network)などの暗号化技術が用いられ、情報漏えい防止のため、端末内に画像データを残さない設計が推奨されています。
遠隔読影のメリット
遠隔読影にはさまざまなメリットがあります。第一に、放射線科医が不在の地域や小規模医療機関でも、高度な専門知識を持つ読影医による診断を受けられる点が挙げられます。医療の地域格差を解消し、患者へ均質な診療サービスを提供することが可能になります。
また、時間的な制約にとらわれず、必要に応じて24時間対応の体制を取ることも可能なため、急性疾患や夜間診療にも柔軟に対応できます。さらに、院内の読影医の負担を軽減すると同時に、ダブルチェック体制の一助とすることもできるので、診断精度の向上や医療安全の強化にもつながります。今後、遠隔医療やデジタルインフラの進展とともに、遠隔読影は医療現場においてますます重要な役割を担っていくと考えられます。
まとめ
読影は、医療現場において疾患の早期発見や適切な治療方針の決定を支えるものです。X線やCT、MRI、超音波、内視鏡といった多様な検査画像を的確に診断することは、医療の質と安全性の確保に直結します。
しかし、放射線科医の不足や地域格差、診療現場の時間的制約といった課題を背景に、読影体制の維持や強化に悩む医療機関も少なくありません。そうした中で注目されているのが「遠隔画像診断支援サービス」です。
iMedicalの遠隔画像診断支援サービスは、100名以上の放射線科診断専門医と連携し、CT・MRI・CR・DRなど幅広いモダリティに対応しています。PACSとの直接接続やレポートシステムとの連携、自動取り込みにも柔軟に対応し、現場の作業負荷を軽減します。さらに、診断クオリティを継続的に管理するタレントマネジメントシステムを導入し、高品質なレポート提供を徹底します。
遠隔読影体制の構築や見直しを検討している医療機関のご担当者様は、ぜひ一度、iMedicalにご相談ください。